「カンテの父、ドン・アントニオ・チャコンへのオマージュ本」-Novograf社、1992年、151ページ
今日はこのブログの新しいセクションとして、フラメンコに関する本の概要と読んだ印象をお伝えしようと思う。これらの記事を通して、ブログのフォロワーの皆さんもこれから紹介しれいく本に触れやすくなることを願う。
それでは、ラ・ウニオン市役所(ムルシア州)により編集されたこちらの本の紹介から始めたいと思う。
*アントニオ・チャコンの写真、ブラス・ベガの個人的なコレクションより、本中にも掲載
「フラメンコの父」は、ご存知カンテ・ホンドの巨匠の一人、カンタオール、アントニオ・チャコンへのオマージュとして捧げられたもの。
筆者が、セビージャのボテーロス通りにあるその名も「ボテーロス」という古本屋で、幸運にも偶然見つけたのだった。店員のダニエルに聞いたところでは、この本は詩人のフェリックス・グランデが、小説家兼エッセイスト兼フラメンコ学者兼新聞記者のマヌエル・バリオスに贈ったもので、数日前に入手したばかりだったとのこと。
本の内容についてだが、この本は様々な作家、評論家、アーティストによるコラムを集めたもので、チャコンの人物像や、彼がフラメンコ界に残した遺産について分析、考察している。
*フェリックス・グランデの名刺、本に挟まっていたもので、本当にマヌエル・バリオスへの贈り物だったことを示唆している
コラムを寄稿したのは、アンヘル・アルバレス・カバジェーロ、ブラス・ベガ、ルイス・カバジェーロ・ポロ、ホセ・ヘラルド・ナバーロ、エミリオ・ヒメネス・ディアス、ホセ・マルティネス・ヘルナンデスとアントニオ・パラ・プハンテ。
コラムの内容は彼のカンテのスタイルや発声テクニックについての評論や分析から、実際に関わりのあった人たちによる逸話や思い出話など多岐にわたる。加えてチャコンが生き、アーティストとしてのキャリアを積み上げていった時の時代背景について、またその後の世代のアーティストへの影響についての文章なども含まれる。
他のコラム集同様、発行時の流行りもあり、「広く深く」といった内容。学術的でなく逸話的な、ただ単純に楽しめるアンヘル・アルバレス・カバジェーロのもののようなコラムから、アントニオ・チャコンのおかげで今に残っている様々なカンテのスタイルについて学ぶことが出来るブラス・ベガによるものまで幅広い。
*本のカバー
またホセ・ヘラルド・ナバーロによる記事も非常に興味深いので、ここで述べておきたい。モリスコの歴史ついての興味深い考察に基づき、フラメンコの起源に関する一説について語っているものだ。その興味深い結論は「ヒターノ主義」として未だ引きずっているが、1992年には既に下記のように述べていた。「万が一疑問が残っていた時のために記しておくが、今まで言及した引用のほとんどは、論文の勉強や研究、探求を経ての結論ではなく、ただの一文、一段落等、つまりそれは直観と憶測の産物である。」今現在評判のいくつかの文献について考えさせられるものである。また疑うことなく読むことについても。
「フラメンコの父」という本は、その分野の様々な筆者と専門家たちの視点を通して、アントニオ・チャコンの人物像とフラメンコのアルテへの貢献をより深く、敬意を持って見る目を与えてくれる。
まとめとしては、まず長さ的にもかなり読みやすい本で、とても面白く、万華鏡のように様々な角度からこのカンテ・ホンドの基礎を作り上げた巨匠に近づくことが出来る。というわけで、フラメンコファンの皆さん、図書館や古本屋からぜひ探してみてください。
文:ホセ・カルロス・カブレラ・メディナ
訳:瀬戸口琴葉
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